薬剤科
薬についてのいろいろな疑問を集めました。
普段何気なく服用している薬ですが、ここではその基本的な知識を身につけ、少しでも効果的にお薬が服用できるようにしましょう。
- Q01.食後30分とは食事の後のちょうど30分後のこと、それとも30分以内のこと?それから、食間って食事の間のこと?
- Q02.薬の服用時間の意味って?
- Q03.頓服薬っていつ飲むの?
- Q04.薬を水なしで飲んではいけないの?
- Q05.錠剤を割って飲んだり、カプセルをはずして飲んでも良い?
- Q06.薬を飲み忘れた。今から飲むか、とばしてしまうか、次回に倍飲むのか?
- Q07.薬を包装(PTP包装)からはずして飲むこと、という注意を見ましたが、包装のまま飲んでしなうことなんで実際にあるの?
- Q08.赤ちゃんに薬を飲ませる良い方法は?
- Q09.薬の保管で注意することって?
- Q10.病院の薬局や、調剤薬局でもらった薬やいつまで使えるの?
- Q11.街の薬局の薬と病院の薬の違いってなに?
- Q12.漢方薬に副作用はないのですか?
- Q13.ピリン系の薬でアレルギーがでますが、アスピリンってピリン系?
- Q14.尿や便の色が変わる薬って?
- Q15.薬の相互作用ってなに?なぜ起こるの?
- Q16.薬の相互作用を防ぐには?
- Q17.たばこを吸うと薬が効かなくなる?
- Q18.貧血で鉄剤を飲んでいる。お茶を一緒に飲むと効かなくなると注意された。食後にお茶が飲みたいがダメ?
- Q19.お酒と薬の関係は?
- Q20.牛乳と薬の関係は?
- Q21.グレープフルーツジュースで血圧の薬が効きすぎる?
- Q22.ワーファリンと納豆の関係は?
- Q23.抗生物質は制酸剤と飲んではいけないの?
- Q24.妊娠期間中のいつ薬を飲むと危険度が高いのか?
- Q25.妊娠の可能性が少しでもあったら、薬を飲んだらいけないの?
食後30分とは食事の後のちょうど30分後のこと、それとも30分以内のこと?それから、食間って食事の間のこと?
食後30分は、食事の30分後、といわれることがあるかもしれませんが、30分以内でもいいし、あまりこだわある必要はありません。どちらでも都合のいいときに飲んでもらって問題ありません。食間は、食事のおよそ2時間後のことをさします。もちろん食事をしながら飲むわけではありません。
薬の服用時間には、主に、次のようなものがあります。
- 食前:食事のおよそ30分前に飲みます
- 食直前:食事の直前に飲みます
- 食直後:食事のすぐ後に飲みます
- 食後30分:食事のおよそ30分後(または以内)に飲みます
- 食間:食事のおよそ2時間後に飲みます
- 就寝前:寝るおよそ30分前に飲みます。
ただし、あまり「30分」になどにこだわる必要はありません。正確に30分ではないといけないわけではありません。時間が多少ずれても、飲み忘れないことが大切です。
薬の服用時間の意味って?
胃は空っぽの状態です。胃が空だと一般的には薬は早く吸収され、早く効果を現します。(例外もあります)その代わりに胃を刺激しやすく、胃を荒らしやすくなります。食前に飲む薬には、食べ物が胃にあると吸収が良くない、ただし、胃を荒らすことも少ない薬(漢方薬など)、糖尿病の血糖値を下げる薬(食後に血糖値が上がるので、食前、または、食後に飲むことが多い)、食欲を増進させる薬、などがあります。食直前:医薬品の添付文書に服用が食直前と記載されているのは、食後の過血糖改善剤である、グルコバイ、ベイスンの2つです。この薬は、食後に飲んでも血糖値の上昇を抑えるのが間に合わないので、この服用時間を守る必要があります。食直後:胃の中に食べたものが一番多くある状態です。食べ物があるので、薬はゆっくりと吸収され、効果が現れるのが遅くなります(薬の中には、逆に、食直後の方が、吸収が良いものもあります)。そのかわりに、胃を荒らすことが少ないのです。食直後に飲む薬は、多くは胃障害を起こしやすい薬です。食後30分に服用するような薬でも、胃を荒らすことがあれば、薬の吸収は遅くなりますが、食直後に飲むと良いでしょう。食後30分:胃の中は、まだまだ食べたものが多くある状態で、薬はゆっくりと吸収されます。食直後ほどではありませんが、胃を荒らすことは少ない状態です。内服薬の多くは、食後30分と指示されます。これは、比較的胃を荒らさないということと、食後とすることで薬を飲み忘れないようにするためです。30分というのは、目安であって、正確に30分である必要はありません。飲み忘れるようでしたら、食事のすぐ後でも結構です。1日3回飲む薬であれば、食事を3回しなくても、食事をするような時間に、3回飲んで下さい。つまり、だいたい均等に、薬を分けて飲むということです。食間(食後2時間):食間といっても、食事をしながら飲むということではなく、食事と食事の間、という意味で、食後2時間くらいたった時をいいます。食事と食事の間、というと、厳密には、2時間より長いのですが、胃の中は、食べたものがなくなり、食前と同じような空っぽの状態になります。食間の指示の薬は少ないのですが、漢方薬のように、吸収されにくく、胃を荒らしにくい薬(漢方薬は食前でも、食間でも自分の飲みやすい方で良い)や、胃潰瘍の薬で、胃粘膜を保護する薬は、食間に飲むように指示されることがあります。就寝前:就寝前に飲む薬は、食前や、食後の場合と違って、胃の中の状態とは関係ありません。就寝前に飲む薬には、下剤(寝る前に飲むと翌朝便通がある)や、睡眠薬などがあります。また、胃酸の分泌をおさえる胃潰瘍の薬(胃酸の分泌は寝ている時間に多い)、喘息発作を予防する薬も、就寝前に飲むことがあります。これ以外にも、何時と何時など、時間を医師が指定する場合もあります。薬の服用時間は、いろいろありますが、薬の袋に指示された服用時間がどうしてもその時間に飲むのが不都合があったり、忘れてしまう、などということがあれば、医師または薬剤師に相談して下さい。もちろん、不便でも服用時間を守るものもありますが、他の時間に変えられることもあります。無理にその薬にとって一番理想的な服用時間を求めるよりも、ともかく薬を飲むことが大切です。
頓服薬っていつ飲むの?
- 鎮痛剤:頭痛、歯痛、偏頭痛、腹痛、けがの痛みなど、痛みがある時に飲みます。次に飲むときまで、5~6時間位、間をあけて下さい。鎮痛剤は、多くは解熱作用もあります。ただし、偏頭痛、腹痛の薬には、解熱作用はありません。解熱剤:目安として、38.5度以上の熱があるときに飲みます。次に飲むときまで、5~6時間位、間をあけて下さい。解熱剤はほとんどが、鎮痛作用もあります。
- 解熱剤:目安として、38.5度以上の熱があるときに飲みます。次に飲むときまで、5~6時間位、間をあけて下さい。解熱剤はほとんどが、鎮痛作用もあります。下剤:便秘の時に、寝る30分位前に飲みます。ただし、すぐに薬に頼るよりも、食べ物(繊維の多い野菜やくだもの)や、運動により、薬を飲まずに排便できるように心がけることも大事です。
- 睡眠剤:眠れないときに、寝る30分位前に飲みます。睡眠剤は、特に、医師の指示を守って飲んで下さい。
- 狭心症発作用剤:主に、ニトログリセリンという錠剤が使われています。狭心症の発作の時に、1~2錠を、舌の下で溶かします。飲んではいけません。効果は1~2分後に現れ、約5分で最高になります。
薬を水なしで飲んではいけないの?
できればコップ一杯位、少なくてもコップ半分の水またはぬるま湯で飲んで下さい。薬を飲むときに水で飲むのは、薬を飲みやすくするためと、薬を吸収しやすくするためです。薬を水なしで飲むと、薬が喉や食道にひっかかって、食道炎や潰瘍を起こすこともあります。特にカプセルはくっつきやすいので、注意が必要です。寝そべって飲むのも薬がひっかかりやすいので、寝ながら薬を飲んではいけません。寝たきりの患者さんに薬を飲ませる時にも、体を起こして飲ませるようにしてあげて下さい。また薬を水で飲むことにより、薬が溶けて、吸収しやすくなります。水の量が少ないと薬の吸収が低下したり、遅くなったりして、薬の効き目が悪くなることがあります。
錠剤を割って飲んだり、カプセルをはずして飲んでも良い?
錠剤やカプセルの中には特別な加工や工夫がしてあるものがあります。そのため、その形のままで飲んでおけば間違いがないことになります。念のため、カプセルはゼラチンでできているので、そのまま飲んでも全く問題ありません。ただし特に加工のしていない裸錠もあります。裸錠は割っても影響はありません。ただ、一般の方は見ただけでは判別ができないかもしれません。半分に割る線(割線)があるものはもちろん割ってかまいません。ただし、割線があるものでも加工(フィルムコートなど)してあるものもあり、割れた部分がかなり苦い薬もあります。加工には次のようなものがあります。
- 糖衣錠:外側を砂糖でくるんだ錠剤
- フィルムコート剤:外側を高分子物質で薄く丈夫な被膜を施した錠剤
以上のものは、苦み、刺激臭をなくし、飲みやすくしたり、湿気、光に対する安定性を向上させます。また、錠剤、カプセル、顆粒剤などには以下のような加工をしたものもあります。
- 腸溶性:胃で溶けず、腸で溶ける。胃では分解し、効果を失うものや、胃を荒らしやすい薬から胃を守る。
- 持続性:薬が少しずつ徐々に溶け、長い時間効果が出る。
これらの薬では、これらの薬では、噛んだり砕いたりすると、腸溶性のものが胃で分解し効果が落ちたり、胃を荒らしたり、持続性のものは短い時間で薬の効果が出たりするので、薬の加工の意味がなくなったり、危険なこともあります。 普通は、わざわざ薬を割ったり、カプセルをはずして飲む方はいないと思いますが、子供や高齢の方などのため、そのようなことが生じる場合には、医師や薬剤師にお話下さい。
薬を飲み忘れた。今から飲むか、とばしてしまうか、次回に倍飲むのか?
目安として、飲み忘れに気がついた時が、本来の飲むべき時間より、次回に飲む時間に近い時は、忘れた分はとばして下さい。逆に、飲み忘れに気がついた時が、本来飲むべき時間からあまりたっていなければ、気がついた時点で飲んで下さい。この場合には、その次に飲むまでの間隔が短くなるので、なるべくその次は少し遅めに服用し、あまり短い間隔で服用をしないようにすると安全です。ただし、痛み止めや、風邪の時の解熱剤、咳止めなどで、症状が改善されていれば、当然飲み忘れたままで大丈夫です。あえて飲む必要はありません。薬は、飲み忘れてもそれほど神経質にならなくても良いものから、できるだけ飲み忘れをしないようにしなければならないものまであります。飲み忘れをしてはいけない場合は、飲み忘れない注意や工夫が必要な時もあります。また、薬の効果が服用時間と密接な関係にあるものは、気がついたらその時すぐに飲めば良い、ではいけないものもあります(糖尿病の薬で血糖値に関わる薬など)。疾患や薬によって、一般論で一概にいえない場合もあるので、薬を飲み忘れることがある方は、念のため、そういった場合の対処を、医師や薬剤師にご相談下さい。
薬を包装(PTP包装)からはずして飲むこと、という注意を見ましたが、包装のまま飲んでしまうことなんて実際にあるの?
実際にかなりあります。包装からはずして飲むことは知っているのに、うっかり包装のまま飲んでしまっています。文献報告されたものだけでも(これはまさにほんの一部です)、年間20例以上あるようですので、実際の事故はどれだけあるか想像できません。錠剤、カプセル剤は、PTPという包装に入っているものが多いのですが、PTPとは、Press Through Packageの略で、押して、突き破る、包装、を意味しています。上部が透明で中が見え、底はアルミ箔が貼ってあります。この包装のまま飲んでしまうと、硬くとがっているので、食道、胃などを損傷し、穴をあけたり潰瘍を発生したりすることになります。製薬会社でも、数年前より申し合わせをして、スリット(包装を切りやすくする薄い切れ目)の変更をしました。切りにくくなって不便に感じた方もいるかもしれませんが、縦と横の両方にはスリットを入れないようにして、包装があまりバラバラにならないようにしました。でもスリットはなくてもハサミで切っておく方もいますし、薬局でお渡しする時に小さな包装になってしまう時もあり、場合によっては同じように飲み込む危険があります。なぜこのような事故が起こっているのかは、薬の取り出し方がわからなかったという例はなく、何かをやりながらで他のことに気を取られていた、テレビを見ていた、粉薬と一緒に混ぜて飲んだ、あわてていた、ふらふらしながら飲んだ、などが原因としてあるようです。ですから、たかが薬を飲むくらいで、と思わず、油断しないで、集中して、包装からはずしたと確認の上、落ち着いて、薬を飲んで下さいね。
赤ちゃんに薬を飲ませるいい方法は?
まず、ミルクに薬を混ぜて飲ませるのは避けて下さい。ミルクに薬を混ぜるとミルクの味が悪くなり、赤ちゃんがミルクを嫌いになるためです。粉薬なら、おちょこやスプーンなどに薬をとり、水やぬるま湯を入れ、箸などで溶き、そのまま飲ませ、その後水やぬるま湯を飲ませて下さい。または、薬を水やぬるま湯で練って、指につけて、赤ちゃんの頬の内側や上あごにぬりつけ、その後水やぬるま湯を飲ませて下さい。赤ちゃんが下痢をしていなければ、砂糖などで味付けしてもかまいません。赤ちゃんには、ドライシロップ、という薬がでることがよくありますが、ドライシロップは水に溶けやすく、または懸濁しやすく、また甘い味がついています。普通は赤ちゃんには水に溶かして飲ませますが、小さな赤ちゃんではない子供の場合は、水に溶かしても、そのまま飲んでも結構です。水に溶かして何日もおくと薬の効果が落ちる場合があるので、何日分もまとめて溶かさないで、できればその都度溶かして飲ませて下さい。授乳後では、おなかがいっぱいで薬を飲まないときもあります。薬の服用時間が食後30分、となっていても、多くの場合、空腹時や食前に飲ませても良いと思います。
薬の保管で注意することって?
病院や薬局でもらった薬をその日の内にすべて飲んでしまうということは、まずないでしょう。ほとんどの場合は数日間、長い場合は3ヶ月分も処方されることもあります。家庭に持ち帰った薬をどう保管したらよいのだろうか?と考える人も多いと思います。では、その疑問に答えるに当たって、まず薬は時間がたつとどうなるかについてお話ししようと思います。薬の多くのものは化学物質でできています。それ故、いろいろな条件に影響されて分解されます。分解されるとその分有効成分が減っていき、効き目が小さくなってしまいます。それだけではなく、分解によって新しく生まれた化学物質が体に悪さをしてそれが副作用として現れてしまうこともあります。それでは、薬が分解されるのを少しでも遅らせるにはどうしたらよいのでしょうか?そのためのポイントは主に4つあると思います。第1のポイントは遮光です。多くの薬は光、特に紫外線によって分解されます。第2のポイントは温度です。化学反応は温度が10度あがるごとに2~3倍速くなるといわれています。つまり、温度が高いほど早く分解されるのです。第3のポイントは湿度です。吸湿によっても薬は変質します。湿度が高い日には散剤が固まったり、変色してしまうこともあります。第4のポイントは微生物です。特に水剤や軟膏は微生物が繁殖しやすいので注意が必要です。以上の4つのポイントをふまえた上で、実際にどこに保管すればよいのでしょう。遮光されていて、温度、湿度が低く、微生物が繁殖しにくい場所ということで、どこのご家庭にもある冷蔵庫がよいでしょう。ただし、ご家庭に小さなお子さんのいる場合は注意して下さい。色とりどりの錠剤やカプセルは子供にとって魅力的なお菓子に見えます。誤って食べてしまわないよう、ほかの食品とはしっかり区別して、子供には開けられない容器にいれるなど、事故を防ぐ工夫をして下さい。
病院の薬局や、調剤薬局でもらった薬はいつまで使えるの?
市販の薬には使用期限が箱などに書いてあるので、それをすぎたら使わないようにすればよいでしょう。しかし、病院の薬局や、調剤薬局でもらった薬には使用期限は書いてありません。では、いつまで使えるのでしょうか?一つの答えとして"医師の処方した日数まで"ということがいえます。この考え方は、薬の劣化とは無関係で、医師は診察の結果、今現在の患者の病気の状態に最適の薬を処方しているということに由来しています。使い切らなかった薬はとっておいて、また同じ症状がでたときに使おうと考える人も多いでしょう。しかし、症状は同じでもその病気の原因は全く違うということもよくあることです。素人判断で、前と同じ症状だからといって同じ薬を飲んでも効かなかったり、かえって悪化してしまうかもしれません。このように考えると、使い切らなかった薬は捨ててしまうというのが賢明なのかもしれません。とはいえ、やっぱりもったいないと思うのも人情でしょうし、二日酔いで苦しいときにあのとき、病院でもらった胃薬をとっておけばよかったと後悔することもあるかもしれませんね。参考までに、病院などでもらった薬は条件のよいところで保管すれば(Q4参照)、1年くらいはもつと考えてよいでしょう。ただし、上記の理由によりおすすめすることはできません。あくまでも自己責任の範疇だということを肝に銘じておいて下さい。
街の薬局の薬と病院の薬の違いってなに?
街の薬局で手に入れることのできる薬は「一般用医薬品」または「大衆薬」といわれ、消費者が自分の判断で自由に購入でき、服用も自らの判断で行うことのできる薬です。一方、病院の薬は「医療用医薬品」といわれ、医師の処方がなければ手に入れることはできません。よく、大衆薬は病院の薬より成分の量が少なく、成分の種類が違うという人がいます。確かにそういう薬も多いのですが、最近の薬店を薬剤師の目から見ると、病院の薬と同じだなぁと思う薬もたくさん見かけます。同成分同含量のそれらの薬は、スイッチOTCといわれる薬に多いようです。しかし、薬店では病院と同じ薬ばかり置いてあるわけではありません。大きな違いは、薬店には主に対症療法に使う薬しか置いてないということです。だから症状が軽く、すぐに治りそうな場合にはよいのですが、2、3日で治らなかった場合には医師の診断を受けた方がよいでしょう。また、大衆薬には1つの薬に何種類もの成分が含まれているというのも違いの一つでしょう。病院の薬は基本的に1つの薬に1つの成分しか入っていません。風邪薬を例に取ってみましょう。薬店では風邪薬を買うと一つでいいですよね。しかし病院に行くと何種類もの薬がでます。大衆薬は不特定多数の人が使うために、1つの薬に熱に効く成分、咳に効く成分、鼻水に効く成分・・・とたくさんの成分が含まれています。もしあなたが風邪で病院に行き、その症状が熱と咳だったらそれらに効く薬2種類以上とおそらく抗生物質(大衆薬には含まれていません。これも1つの違いですね)がでるでしょう。ここでは鼻水の薬はでません。つまり、病院では医師があなたの症状にあわせて成分を選んでくれているわけです。最後に大衆薬のことで注意していただきたいことがあります。それは、病院の薬を飲んでいるときには大衆薬を飲まないで下さいということです。大衆薬はそれ単独で飲んでいる場合には安全ということになっていなすが、相互作用という点から見ると危険なことがあります。たとえばスイッチOTCとしてH2ブロッカーという胃薬がありますが、その中の1つにシメチジンという成分を持つものがあります。シメチジンはP450阻害というものに起因する相互作用の原因の20%を占めるといわれます。言い換えれば、不注意な併用により副作用が発現するかもしれないということです。こういったことはシメチジンだけでなく、ほかの大衆薬にもいえることです。ですから病院の薬を飲む場合にはやめるか、たとえ飲む場合でも医師または薬剤師に相談してからにして下さい。
漢方薬に副作用はないのですか?
西洋医学で用いられる薬に比べて漢方薬は自然のものだから、効き目が穏やかで副作用がないと考える人が多いようですが、漢方薬も薬である以上、使い方を間違えば副作用もでます。漢方薬を処方するには長い経験と訓練それに膨大な知識が必要となります。漢方薬の中には猛毒で知られるトリカブトを含んでいるものすらあります。ですから、生半可な知識で独断で服用するのはとても危険なことです。また、西洋薬と漢方薬を飲みあわせることによって副作用が起きることもあります。漢方薬を常用している人がいますが、そういう人が病院に行って薬をもらったときなどは注意して下さい。医師または薬剤師に相談するとよいでしょう。
ピリン系の薬でアレルギーがでますが、アスピリンってピリン系?
アスピリンというと何となくピリン系のような気がしますが、アスピリンはアセチルサリチル酸ともいい、実は非ピリン系です。ところで、一度ピリン疹がでた人は今後もピリン系の薬に反応する可能性が非常に高くなります。しかも2度目の反応は発疹にとどまらず、もっと重くなることがあります。だからピリン疹の既往歴がある人は、病院で薬を処方されたり、薬局に風邪薬や鎮痛剤を買いに行ったりするときには必ず医師や薬剤師にその旨を伝えるようにしましょう。これを書いている私も実はピリンアレルギーなのですが、以前けがをして入院したときに、それを言うのをすっかり失念していたらみごとにピリン系の痛み止めを出されてしまい、しまったなぁと思ったことがあります。みなさんはそうならないように注意して下さい。
尿や便の色が変わる薬って?
薬を飲んだ後、自分の尿や便の色が変わったら、大変な副作用が起こったのではないかとビックリされる方もおられるかと思います。しかし、薬によっては服用するとそのものの性質により、尿または便の色に変化をきたすものもあり、たいていの場合は心配しなくても大丈夫です。しかし、希に抗アレルギー剤や抗菌剤などで副作用の結果として尿の色調が変わることもありますので、不安に思ったら担当医または薬剤師に相談するとよいでしょう。また、尿や便だけでなく汗や涙(ソフトコンタクトレンズが着色してしまったりする)の色が変わることもあります。
副作用ではなく尿の色を変えることのある薬剤の例
薬物 | 成分 | 色 |
ビタミンB2 | リボフラビン |
黄色 |
骨格筋弛緩剤 | クロルゾキサゾン | 燈-赤紫色 |
抗結核・抗ハンセン病抗生物質 | リファンピシン | 赤橙色 |
潰瘍性大腸炎治療・抗リウマチ剤 | サラゾスルファピリジン | 黄赤色 |
三環系抗うつ剤 | アミトリプチン | 青緑色 |
抗トリコモナス剤 | メトロニダゾール | 暗赤色 |
血圧降下剤 | メチルドパ | 黒色(尿を放置すると) |
鎮咳去痰薬 | ヒベンズ酸チペピジン | 赤色 |
下剤 | センナ | 黄褐~赤色(尿がアルカリの時) |
下剤 | フェノバリン | 赤色(尿がアルカリの時) |
鎮痙剤 | 臭化チメピジウム | 赤色 |
糖尿病性末梢神経障害用剤 | エパルレスタット | 黄褐~赤色 |
消炎鎮痛剤 | 塩酸チノリジン | 黄褐色の蛍光 |
抗パーキンソン剤 | レボドパ | 黒色 |
抗アンドロゲン剤 | フルタミド | 琥珀色または黄緑色 |
副作用ではなく便の色を変えることのある薬剤の例
薬物 | 成分 | 色 |
抗結核・抗ハンセン病抗生物質 | リファンピシン | 赤燈色 |
胃炎・消化性潰瘍治療剤 | 水酸化アルミニウム | 白色または小斑様 |
鉄剤 | 黒色 |
薬の相互作用って何?なぜ起こるの?
薬の相互作用(薬物相互作用:drug interaction)は、薬と薬の飲み合わせのことで、薬が効きすぎて副作用が出やすくなったり、逆に薬が効かなくなったりすることです。また、薬と薬だけでなく、薬と食べ物や飲み物、嗜好品などでも、薬の作用が強くなったり弱くなったりすることもあります。広い意味では、薬力学的薬物相互作用(pharmacodynamic drug interaction)と薬動力学的薬物相互作用(pharmacokinetic drug interaction)に分かれます。ただ、通常相互作用というと、後者をさすことが多いようです。薬力学的薬物相互作用とは、例えば、同じような作用がある薬を2種類飲めば薬の効き目が出過ぎたり、副作用が出やすくなります。逆に作用が反対の薬を一緒に飲めば薬の効果が弱まります。薬動力学的薬物相互作用は、薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)を知る必要があります。飲み薬は、主に小腸で吸収され、血流に乗って体のいろいろなところに行きわたり(分布)、主に肝臓で体から薬を捨てて行くために薬の形を変え(代謝)、主に腎臓から薬が排泄されます。このように、飲んだ薬は、吸収、分布、代謝、排泄の4つの過程を経て、体からなくなっていきますが、相互作用は、この4つの過程の中で起こります。吸収過程の相互作用は、例えばテトラサイクリン系の抗生物質(例:ミノマイシン)と制酸剤などで金属イオンが多く含まれているもの(例:マーロックスやアルサルミン)を一緒に飲むと吸収されにくいキレートという物質になってしまい、ミノマイシンが吸収されなくなり、効果が落ちます。この場合は、ミノマイシンを先に飲んで2時間ほどあけてマーロックスやアルサルミンを飲めば防ぐことができます。代謝過程では、薬を代謝する酵素が絡むもので、薬により、薬物代謝酵素を出しやすくするものと、逆に出しにくくするものがあります。出しやすくするものは相手の薬を速く代謝するので、相手の薬の効き目が落ちます。出しにくくするものは、相手の薬の代謝が遅れるので、薬が長く体に残り、相手の薬の効き目が強くなります。薬の相互作用のうち、一番起こる頻度が多いものは、この代謝過程による薬物代謝酵素による相互作用です。一般に代謝、分布、排泄の過程の相互作用の場合は、吸収過程の相互作用と違い、薬を飲むのに時間をあけても防ぐことはできません。分布過程の相互作用は、薬物の血漿蛋白との結合率によって起こります。頻度としては少ないものですが重要なものもあります。薬は吸収されて、血液中に入ります。血液中に入ると、薬の一部は血液中の蛋白(主にアルブミンという蛋白)と結合します。つまり薬は血液中で、アルブミンと結合している薬(結合型)と結合していないフリーの薬(遊離型)があることになりますが、薬としての効果を現すのは遊離型の薬です。アルブミンとどれくらいの割合で薬が結合するかは、薬によって全然違います。例えば抗凝血剤のワーファリンは、薬の量を微妙にコントロールする必要がある薬ですが、遊離型のものはほんの数パーセントで、ほとんどアルブミンと結合しています。ワーファリンと一緒にアルブミンと結合しやすい他の薬が血中に入ってくると、ワーファリンと他の薬とでアルブミンの取り合いをして、ワーファリンが追い出されて遊離型になり、ワーファリンの効き目が強く出て、出血など副作用を起こすことがあります。 排泄の過程での相互作用は、頻度としては他のものよりかなり少ないです。例として、糖尿病薬のクロルプロパミドが鎮痛消炎剤のフェニルブタゾンで尿中排泄を阻害され、低血糖になったり、ペニシリン系やセファロスポリン系の抗生物質が痛風治療薬のプロベネシドにより尿中排泄が阻害されたりすることがあります。
薬の相互作用を防ぐには?
2カ所以上の病院の医師から薬が処方される場合に、全く同じ薬がだぶって出れば患者さんもわかると思います。でも医療用医薬品で内服薬だけでも1万品以上ありますので、同じ効果で名前の違う薬がだぶって出ても、見た目だけではとてもわかりません。また、全く同じ成分、含量の薬なのに、たくさんの製薬会社が別の商品名で売っている薬もたくさんあります。当然見た目のデザインは違ったものになります。ですから、もらった薬を見た目で判断することはできないし、無意味なことにもなります。また、相互作用は、全く予想もつかない薬どうしの組み合わせで起こることも多いので、やや専門的な知識が必要になります。2人以上の医師にかかるときは、一方で出ている薬を他の医師に見せるなり、薬の名前や効能などが書かれた用紙をもらっていればそれを見せるなりしていただくと良いと思います。ともかく、心配だなと思ったら、医師や薬剤師に、一緒に飲んでも大丈夫か聞いて下さい。それから、相互作用では様々な程度のものがありますが、絶対に一緒に服用してはいけないケース(禁忌)と、注意をした上で一緒に飲む(一緒に飲まざるを得ない)場合とがあります。相互作用により、薬の作用が出過ぎるか、弱まることがあるかもしれない、という可能性があっても、承知の上で、処方される場合もあります。
タバコを吸うと薬が効かなくなる?
薬が体に入ると、肝臓で代謝(薬の形を少し変えて、腎臓から排泄されるようにすること)されて、体からなくなっていきます。肝臓で代謝するときの一番の働き者が、薬物代謝酵素です。薬物代謝酵素はチトクロームP450という変わった名前です。この酵素は、薬を代謝するための蛋白質ですが、この酵素を出しやすくする薬(または物質)と、この逆にこの酵素を出しにくくする薬(または物質)があります。薬の相互作用とは、薬と薬(または物質)の飲み合わせで薬が効かなくなったり、効きすぎたりすることが起こることですが、相互作用が起こる一番多い原因は、この酵素を増やしたり減らしたりするためなのです。タバコを吸っていると、喘息の薬(気管支拡張剤)のテオフィリンなどでは、薬を多く飲まないと効かなくなります。喫煙は薬物代謝酵素をたくさん出す物質なのです。そのため薬が体から速く排泄されるようになり、薬が効かなくなります。逆に、同じ量の薬を飲んだままの状態で、突然禁煙すると、本当ならそんなにたくさんの薬がいらない状態なのに、多い薬を飲んだままになるので、テオフィリンの中毒症状が現れることがあります。もしテオフィリンを飲んでいてタバコを吸っていてる方が(これ自体好ましくない事ですが)、禁煙したりタバコの量を減らしたら、必ず医師にそのことはお話下さい。せっかくタバコを止めたり減らしたのに、中毒症状が出たら残念ですし、また薬の量が減らせるかもしれません。
貧血で鉄剤を飲んでいる。お茶を一緒に飲むと効かなくなると注意された。食後にお茶を飲みたいがダメ?
お茶を飲んでも全く問題ありません。一般向けの薬に関する図書などで、鉄剤に関しての注意事項を見ると、いまだにお茶を飲まないこと、という注意も見かけます。でも、最近では、鉄剤を飲んだすぐ後でも、お茶を飲んでも問題ありません、という見解になっているようです。鉄剤は、理論的にはタンニン酸を含む飲料とでキレートという物質を作り、吸収が抑制されるといわれていますが、緑茶で服用した実験データを見ると、全く影響を受けていません。ですから、お茶好きの方は、全く我慢する必要はないといえます。ただ、鉄剤は他の薬との相互作用では、主にくすりが吸収されるときに起こる相互作用が多く、一緒に飲むと吸収が悪くなる薬(例えば、テトラサイクリン系やニューキノロン系の抗生物質、甲状腺ホルモン剤のチラージンSなどが効かなくなる、下痢止めのタンニン酸アルブミンとで鉄の吸収が悪くなる)があります。 薬は原則として、水やぬるま湯で、とうたっていることが多いですが、薬をお茶で飲んでも特に問題はないと考えています。
お酒と薬の関係は?
お酒は血液の循環を良くするため、薬の作用が強く現われるとされています。また、中枢神経を抑制する作用もあるので、同じ作用を持つ薬、特に催眠剤や精神安定剤では危険なこともあります。ただ、薬を飲んでいるからお酒は全て禁止、とすると、無理な方もいるでしょうし、人生がつまらなくなってしまう方もいるでしょう。飲んでいる薬や病気の状態にもよりますので、医師に良く相談をしてみましょう。先に述べたように、中枢神経を抑制する作用がある薬は、お酒と一緒に飲む場合に、薬とお酒のお互いの中枢神経抑制作用が強まり、注意が必要です。また、お酒により薬の作用が強まる薬も危険です。主な例として、睡眠薬、精神安定剤、抗うつ剤、精神分裂病治療剤、抗うつ剤、鎮痛剤、抗てんかん剤、抗ヒスタミン剤、血糖降下剤などは相互作用の危険性があります。
牛乳と薬の関係は?
抗生物質のうち、テトラサイクリン系とニューキノロン系のものは、牛乳中のカルシウムとで、吸収が阻害されることが知られています。ただ、薬によりあまり影響がないものもあるので、必ずしも併用禁止とは限りません。少なくても薬を飲んだ後2時間あければ影響ありません。また、骨粗鬆症の薬のダイドロネルは(カルシウムだけではありませんが)、食物、特に牛乳や乳製品のような高カルシウム食や、カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムのような金属を多く含むミネラル入りビタミン剤又は制酸剤等は投与前後2時間以内は摂取及び服用を避けるように注意が必要です。(ダイドロネルはカルシウム等と錯体を作ること、また動物実験で非絶食投与により、吸収が著しく低下することが確認されています) また、制酸剤の中には、ミルク-アルカリシンドロームmilk-alkali syndromeといい、大量の牛乳と一緒に飲むと高カルシウム血症が起こり、血中の尿素・窒素が多くなって吐き気や食欲不振などを起こすことがあります。 以上のように、牛乳と組み合わせが悪い薬剤もありますが、逆に、消炎鎮痛剤など、胃を荒らしやすい薬を飲む場合に、胃を守るために、牛乳などで服用することがすすめられる場合もあります。
グレープフルーツジュースで血圧の薬が効きすぎる?
グレープフルーツジュースを一緒に飲むと血圧の薬の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがあります。グレープフルーツジュースとの相互作用がいわれているのは、ジヒドロピリジン系のCa(カルシウム)拮抗剤です。他に、免疫抑制剤のシクロスポリン(サンディミュン)やタクロリムス水和物(プログラフ)、アレルギー性疾患治療剤のテルフェナジン(トリルダン)なども血中濃度が上昇することがあります。 血圧降下剤にはたくさんのグループがあり、グループごとに特徴や性質がありますが、グレープフルーツジュースとの相互作用が現在のところ報告されているのは、ジヒドロピリジン系のCa拮抗剤です。グレープフルーツジュースとの服用で、ジヒドロピリジン系のCa拮抗剤の血中濃度は、あまり影響がない薬もありますが、ニソルジピン(バイミカード)では、5倍以上も上昇しており、グレープフルーツジュースとの服用は避けておいた方が安心のようです。また、グレープフルーツジュースとの服用、といういわれ方をしますが、文献報告中の実験がみなジュースにより行われているためで、グレープフルーツについてもグレープフルーツジュースと同様に相互作用を考えるべきでしょう。もしグレープフルーツジュースを飲んだりグレープフルーツを食べたりする機会がある方で、心配な方は、薬剤師に相談をして下さい。 なぜ相互作用が起こるかの詳細は不明なところもありますが、グレープフルーツ中の成分がジヒドロピリジン系のCa拮抗剤の肝臓での薬物代謝酵素であるチトクロームP450(詳しくいうとチトクロームP450のうちCYP3A4という酵素)を阻害することが考えられています。
ワーファリンと納豆の関係は?
ワーファリンを飲んでいる場合、影響があると考えられている食べ物に、納豆、緑色野菜、果物があります。特に注意が必要なのは納豆です。ワーファリンは、ビタミンKの拮抗物質です。ビタミンKは出血の時、血を止めるのに必要なビタミンです。ワーファリンはビタミンKに拮抗して血液を固まりにくくする薬です。ですから、ビタミンKを一緒にとると、ワーファリンの効果が減弱します。納豆は、ビタミンKの含有量より、ビタミンKを産生する納豆菌が含まれているため、納豆が食生活上必須なものでないので、通常ワーファリンを飲んでいる方は避けていただいています。一方、緑色野菜や果物では、ほーれん草、キャベツ、ハナヤサイがビタミンKの含有量が多く、その他、パセリ、ハッサク、トマトジュースを大量にとって、トロンボテストの値(ワーファリンの量を決めるため、血液の固まり易さをみる血液検査の値)が上昇した例がありますが、緑色野菜や果物は食生活上必要なものなので、一時的な大量接種をしないようにして、1日の摂取量をコンスタントな量にして下さい。ワーファリンは非常に慎重に投与量を決めている薬剤でありながら、他の薬との相互作用も非常に多い薬です。別の疾患で他の医師にかかる場合には、必ずワーファリンを飲んでいることを話して下さい。街の薬局で薬を買うときも、ワーファリンを処方している医師に前もって確認の上、薬を飲むようにして下さい。特に、新たに薬を追加して飲む場合には、血液の凝固能(血液の固まり易さ)が変わる可能性があります。
抗生物質は制酸剤と飲んではいけないの?
テトラサイクリン系とニューキノロン系の抗生物質と、制酸剤のうち金属を含むもの(制酸剤でなくても金属を含むもの、例えば鉄剤なども)を一緒に飲むと、抗生物質の吸収が阻害されて、薬によってはかなり効き目が落ちるもの(半分程度になるものや、ほとんど全く吸収されない組み合わせもあります)があります。この相互作用は薬の吸収過程での相互作用で、抗生物質と金属が結合して、キレートという吸収されにくい物質ができてしまうため起こります。吸収過程での相互作用は、時間をあけて飲むと防ぐことができます。これを防ぐには、抗生物質を先に飲み、2時間(薬によっては1時間でも良いものもあります)あけて制酸剤などを服用すると、効果が落ちるのを防ぐことができます。制酸剤などが先だと、4時間あけなくては吸収が阻害されるものもあります。これらの組み合わせで薬が出る場合には、薬の飲み方を説明されたり、飲み方を書かれた文書などが渡されることがあるのでそれを参考にして下さい。抗生物質は、その中にもいくつかグループがあり、グループ(系)ごとにある程度共通の特徴や性質があります。良く使われているものに、セフェム系、ペニシリン系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系などがありますが、制酸剤との相互作用は、テトラサイクリン系と、ニューキノロン系の抗生物質です。制酸剤もたくさんの種類がありますが、そのうちこの相互作用があるものは、薬の中に金属(アルミニウム、マグネシウム、カルシウムなど)が含まれているものです。金属を含まないものは関係ありません。
妊娠期間中のいつ薬を飲むと、危険度が高いの?
妊娠月数 | 1か月 (0~3週) |
2か月 (4~7週) |
3~4か月 (8~15週) |
5~10か月 (16~39週) |
服用の危険度 | 無影響期 | 絶対過敏期 | 相対過敏期~比較過敏期 | 潜在過敏期 |
奇形について | 奇形は起こらない | 一番注意が必要 | まだまだ注意して | 奇形はなくなっていくが、胎児への影響はあるので注意 |
薬の服用は、妊娠期間のいつ薬を服用したかによって、胎児への危険の度合いが違います。
- 妊娠3週まで:胎児の奇形はないと考えられる。ただし、薬に残留性があるもの(風疹生ワクチンや金チオリンゴ酸ナトリウムというリウマチ剤など)は注意が必要。
- 妊娠4週~7週末まで:奇形に関し一番危険な時期。胎児の重要な器官(中枢神経、心臓、消化器、四肢など)が発生、分化する時期であるためです。
- 妊娠8~15週末まで:重要な器官の形成は終わっているが、性器や口蓋はまだ終わっていないので、まだ注意が必要な時期です。
- 妊娠16週~分娩まで:この時期には奇形の心配はなくなります。ただし、奇形以外の薬の影響(副作用)があります。この時期には薬は胎盤を通過して胎児に移行します。薬により胎盤を通りやすいものと通りにくいものがありますが、一部の薬を除いて薬は胎盤を通過します。例えば妊娠後期では、解熱鎮痛消炎剤が胎児の循環に危険な悪影響を及ぼすことがあります。こうしてみると、当たり前かもしれませんが、妊娠4週以降は危険度に違いはありますが、薬は飲まないに越したことはありません。服用しなければならない場合は必ず医師の指示のもとに飲むことが大事です。ただ逆に、一度や二度の薬の服用で、全く心配ないのに、必要以上に心配をしすぎてしまう場合も多いようです。
妊娠の可能性が少しでもあったら、薬を飲んだらいけないの?
例えば、風邪をひいた場合などで言うと、次の月経がくる頃になったら、できるだけ月経が来るまで、つまり妊娠が否定されるまで、薬を飲まないようにすると安心です。月経予定日を過ぎて月経がまだなら、薬は飲まないことが安全です。病院の薬だけでなく、街の薬局で売っている薬も、飲まないことが安全です。 それは最終月経日から28日たった頃からが一番危険なときだからです(Q2参照)。最終月経日から28日目というと、次の月経がくる頃です(妊娠していれば、妊娠4週という時です)。ですから、多くの場合、妊娠に気がつかないで薬を飲んでしまうことにもなります。こんな時、風邪をひいたりすると、解熱鎮痛薬や風邪薬を飲んでしまい、その後、月経がなく、あとで妊娠がわかり、あの時薬を飲んでしまった・・と心配をするケースがとても多いようです。統計的にも、妊娠中のいつ薬を飲んでいるかを見ると、一番危険な絶対過敏期とされる28~50日までが一番多く飲まれています。つまり、妊娠に気づかないために薬を飲んでいます。飲んでいる薬の内容では、解熱鎮痛消炎剤、総合感冒剤、抗生物質が上位を占めています。誰でも妊娠していれば、むやみに薬を飲むのは控えると思いますが、月経が遅れるまでは、妊娠?と思わないことが多いので、薬のことまでは考えないものです。 理論的には、一部の例外を除き、最終月経日から28日目までは、薬を飲んでも奇形という点では、問題はありません。ただ、その後が、突然一番危険な時期になってしまうので、ちょっと計算違いや勘違いをすると心配なことになってしまいます。 ただし、一度や二度薬を飲んだからと言って奇形になる可能性が増える、ということは(薬によりますが多くの場合)ほとんどない、と考えられます。ただ、出産までの約280日の間、「妊娠に気づかずに薬を飲んでしまったので心配」などという無用の心配をしないですむように、妊娠の可能性が少しでもあれば、否定されるまで、不要の薬は飲まないような心がけが必要ではないかと思っています。 妊娠中の服薬については産婦人科医に相談していただきますが、少なくても、薬を飲んだからといって安易な人工中絶をするのは避けるべきです。